中古バイクを選ぶときの手順とチェックポイントをご紹介します。
ヤフオクやメルカリの普及で、日本全国の人からバイクを直接買う事が出来るようになりましたが、その結果以前よりも買手の厳しいチェックが必要となっています。
目次
中古バイクを選ぶときの大原則
バイクを選ぶ基準は人により変わります。
ボロボロのバイクを自分で直したいとか、今あるバイクの部品を入手するために同じバイクがもう1台必要だ、等の理由で購入するなら話は変わりますが、トラブルの発生を出来るだけ抑えて、気持ちよく乗ることを考えるなら、次の4点が重要なポイントとなります。
- 年式が10年を超えるバイクを買うなら、自分で直すか修理代をつぎ込む覚悟が必要
- 買う前には必ず現物(実車)を見て、触って、またがって確認する
- 中古バイク販売店の保証は必ずつけさせる
- 買ったら直ぐに乗りまくること
それではそれぞれのポイントについて説明します。
年式が10年を超えるバイクを買うなら、自分で直すか修理代をつぎ込む覚悟が必要
古いバイクほど不具合が出やすくなります。
それに加えて製造から10年以上経つと、修理用部品の製造まで終わってしまっている可能性も高くなります。
つまり直したくても直せなくなるのです。
どうしても直したいなら、他の車体から部品を取ってくるか、他のバイクの部品を流用するか、或いは特注で作らなければなりません。
それが出来なければ、古い部品をだましだまし使い続けるしかありません。
何れの方法を取るにしても、相応の手間がかかります。
その手間をバイクショップに負わせればお金がかかります。
つまり古いバイクは買う時だけではなく、買った後にも手間やお金がかかるという事です。
どうしても10年以上前のバイクが欲しいなら、ヒットした車種を選びましょう。そうすれば部品の入手が容易になります。
また不具合の原因や修理方法を知っているショップの数も多くなりますし、ブログやYouTube等で修理方法を調べられる可能性もあります。
ヒットした車種の方が、不具合の原因を探るのも、修理するのも、部品を入手するのも比較的容易になるのです。
中古バイクは買う前に現物(実車)を見て、触って、またがって確認する
中古バイクを買う際に確認すべき点を実際の作業手順としてお伝えします。
この内容をご覧いただければ、実車確認がいかに大切かがお分かり頂けると思います。
これらの確認作業に協力的ではないバイク店や売主からはバイクを買わない方が良いでしょう。
確認を嫌がるのは不具合を隠しているからだと考えて下さい。
チェック① 先ずはぐるっと回ってバイクの全体を見よう
外観からチェックできることは結構あります。特に保管状態と転倒歴は外観から得られる情報が多いので、じっくりと観察しましょう。
フレーム
フレームとはこの赤線の部分です。
車種によって様々な形状が有りますが、役割は同じでバイクの背骨に該当します。
フレームに傷、凹み、部分塗装の跡がないかを確認してください。
フレームへの損傷が有るという事は、そのバイクが転倒などでかなり大きな衝撃を受けていることを意味します。
フレームが損傷すると、バイクは真っすぐに走らなくなりますから、フレームに損傷の跡が有るバイクには手を出さない方が賢明です。
ちなみにフレームの修理はバイクが1台買えるほどの値段になりますので、修理は考えないで下さい。
フロントフォーク
フロントフォークのこの部分をチェックしてください。
ここに接触した後がないかを確認します。
ここにキズがある場合、バイクの転倒によってフロントフォークを打ち付けています。キズだけでなく、フロントフォーク自体が歪んでいるかもしれません。
フロントフォークが歪んでしまうと真っすぐ走ることが出来なくなります。
リア サスペンション
この部分です。バイクにより形状が違います。
ここではサビの状態を見て下さい。
リアサスペンションはサビが出ても落とすのが難しい部分であるため、前の持ち主がきちんとメインテナンスをしていたかどうかが、はっきりと出る部分です。
リアサスペンションにサビが多いバイクは、雨ざらしで放置されていたバイクと考えて下さい。
エキパイ
エンジンからマフラーに繋がる部分です。
この部分が痛んでいるかどうかで、そのバイクに最低限の愛情が注がれていたかどうかが分かります。
エキパイは排気の熱と、雨風による冷却を同時に受けますし、小石の跳ね上げによる小傷や、泥や虫の焦げ付きも起こります。バイクにとって過酷な要素を全て直接受ける部分なのです。
ですから、最低限のケアをしていないと、直ぐにエキパイが痛んできます。
エキパイが痛んでいるバイクは、殆どケアされていなかったバイクです。エキパイが痛んでいるバイクは、走行距離以上に衰えています。
ネイキッド車なら、この部分の傷みには直ぐに気付けるのですが、フルカウル車だと意識して見ないと気付くことが出来ません。
このようなバイクの場合には、注意して下さい。
チェーン
リアのサスペンションと同じで、メインテナンスされていない車両はチェーンがサビています。
チェーンは消耗品ですから交換すれば済むのですが、交換費用が掛かることは考慮しましょう。
チェーンがこのような状態の場合には、保管環境が悪かっただけではなくメインテナンスもほぼ行われていないバイクですので、何かしら不具合が有るとみて間違いありません。
チェーンが寿命になると、スプロケットの交換時期でもあるので、修理費用が予想以上に掛かる可能性が高くなります。
クランクケースカウル燃料タンクマフラーバーエンドとレバー
何れも転倒するとキズが付く場所です。
これらにキズが有る場合には立ちごけのキズなのか、転倒キズなのかを見極めましょう。
立ちごけの傷は、固いものを押し付けられたような傷がつきます。一方で転倒キズは人の擦り傷のように、線状の傷が入ります。
中古車はかなりの確率で立ちごけのキズが有るため、気にしていたらきりが無いのですが、転倒キズは転倒時に大きな衝撃が加わってるので、別の部分にダメージを及ぼしている可能性があります。
転倒キズを見つけたら、フロントフォーク、フレームを再確認してください。
また次にあげる、チェック②とチェック③を慎重に行う必要があります。
転倒傷は何れも修理は可能ですが、安くはありません。
一方で立ちごけのキズである場合には、見た目は悪いですが走行に支障はありません。
エキパイとエンジンの接合部分
この部分はバイクが走っている間、常にエンジンの熱と風雨にさらされるので、腐食が進みやすい部分です。
メインテナンスをきちんと行っていないバイクは、この部分が徐々にサビてきます。
サビることで見かけは悪くなりますが、バイクの調子への影響はありません。
個々のサビが問題となるのは、サビが原因でボルトが回らなくなり、整備のためにマフラーを外す事が出来なくなっている場合です。
そうなるとバイク店に整備を依頼しなければならなくなります。
その他
その他の確認した方が良い部分です。これらは何れも消耗品なので、参考程度に止めておいてください。
良心的なバイク店は、これらの消耗部分をある程度整備して販売します。もし整備していない場合には、納車時に整備してくれるかどうかを確認しましょう。
整備してくれない場合(これを現状渡しと言います)には、その分を値引き交渉に使う事も出来ます。
ブレーキフルードの劣化
ブレーキを作動させるためのオイルです。通常はサラダ油のような色ですが、古くなると紅茶のような色に変色します。
前輪用と後輪用があるので、両方チェックします。
前輪用はここに付いています。
形状には四角いものと丸いものが有ります。
後輪用は後輪の前、シートの下に付いている場合が多いです。
尚、ブレーキフルードの交換は、前後輪両方一度に行う場合が多いので、後輪側の確認が難しければ、前輪だけ確認しても大丈夫です。
ブレーキパッドの残量
ブレーキパッドは慣れないと少し確認しづらいのですが、パッドが減ったままで走行すると、ブレーキの効きが悪くなるだけでなく、ブレーキディスクを傷め、ディスクまで交換することになります。
パッドの減り具合はキャリパー(ブレーキディスクをはさむための部品)の隙間からのぞき込むことで確認出来ます。
少々見難いのですが、この方向から覗くようにします。
これがキャリパーをのぞいたところ。赤矢印がパッドです。白矢印で示された場所にミゾが有るのが見えるでしょうか。
パッドにはこのようにミゾが切られているので、このミゾが見えるとパッドの減り具合が分かります。
新品の時のミゾの深さは4㎜位、残りが1㎜位になったら交換時期です。
この確認は光が当たっていないと見えにくいので、確認が難しかったら店員に聞いてもいいでしょう。
(ミゾが無いパッドもあります。その場合には厚みで判断します)
新品と摩耗した物では、これだけの差があります。
ブレーキパッドは、前輪だけでなく後輪にもありますので、両方確認して下さい。
スプロケットの摩耗
スプロケットはチェーンの動きをタイヤに伝える重要な部分ですが、段々と歯が摩耗して尖ったり歯の高さが低くなったりします。
摩耗するとチェーンが外れたり切れたりしてしまうので早めの交換が必要です。
チェック② バイクに触ってチェックしてみよう
人の手の感覚と言うのはとても優れていて、目に見えないキズを見つけるのにうってつけです。
フロントフォークのキズやサビ
フォークのこの部分を触ってみましょう。
確認すべき場所(インナーチューブ)はバイクによりハンドル側にある場合と、タイヤ側にある場合があります。
フロントフォークは太い部分と細い部分に分かれています。細い方がインナーチューブですから、細い方を触ってみて下さい。
触ってみた時に表面がつるつるで、何もひっかかる物が無ければOKです。
ですが手に引っ掛かるキズやサビが有る車体は避けた方が良いでしょう。
また手に黒い油が付く場合にはオイル漏れを起こしていて、早い時期に修理が必要になります。
フロントフォークには様々な種類があり高額なものも多いため、修理費にもかなり開きがありますが、最低でも3万円は必要と考えて下さい。
因みに雨ざらしのバイクはこのような状態になります。
性能に問題を及ぼすのは、赤い円で囲ったインナーチューブ(フロントフォークの細い部分)のサビです。この部分のサビはフロントフォークの内部を傷めます。
青い円で囲った部分のサビ(フロントフォークの太い方のサビ)は、見かけは悪いですが性能には影響しません。
キチンと保管されていてメインテナンスも行われているバイクのインナーチューブは、古くてもこのようにキレイな状態です。
タイヤの弾力性
タイヤを爪で押してみて下さい。タイヤは古くなると弾力がなくなってきますので、古いタイヤは爪を立てても食い込まなくなってきます。
また、スリップサインが出ていないか?ひび割れはないか?も大切です。
バイクのタイヤは想像以上に高いので、交換が必要な状態なら予算に組み込む必要があります。
前輪と後輪では減り方が違うので、両方ともチェックしてください。
チェック③ バイクにまたがってみよう
バイクにまたがった時には、駆動部分の確認を行います。
また足つきも確認しましょう。
つま先しか付かないバイクは慣れるまでの間は、停車時に立ちごけをする可能性が高くなります。
サスペンションのチェック
先ずはバイクのサスペンションがきちんと効いているかを確認します。
座った時に、適度な弾力が有ってから車体が沈むのが正常。抵抗が無くフワフワと沈み込むならサスペンションの異常が考えられます。
正常な状態を知るには、予め新車や程度の良い車両で感触を確認したうえで行うと良いでしょう。
次に前輪のブレーキを握った状態で、ハンドルに体重をかけて、フロントフォークを沈ませます。
その時にスムースに沈み込まず、途中で引っ掛かりを感じる場合はフォークが曲がっている可能性があります。
体重を戻すとフォークも戻って(伸びて)きますが、その時に引っ掛かりが無いことも重要です。引っ掛かる場合にはやはり曲がっている可能性があります。
また、何回かサスペンションを伸び縮みさせた後にフロントフォークを見て、黒い筋が付いてる場合にはオイル漏れを起こしています。
オイル漏れの修理は部品代は安いのですが、フロントフォークの分解が必要なため、工賃が高くつきます。
ハンドル(ステアリング)のチェック
バイクをまっすぐにしてハンドルを左右の一番端までゆっくりと動かします。
この時に何かの引っ掛かりを感じたり、左右でハンドルが止まる位置が違う場合には注意が必要です。恐らくひどい転倒歴があります。
引っ掛かりの症状は次第に悪化しますので、何れ整備が必要になりますが、大掛かりな修理になることが多く費用も掛かります。
ブレーキローターのチェック
タイヤが1回転するまでバイクを押してください。
その時にスムースに進まず、あるところだけ抵抗がある場合には、ブレーキローターが歪んでいる可能性があります。
チェック④ バイクのガソリンタンクを開けてみよう
タンク内部がサビていないか確認します。出来れば日の光の下で、難しい場合にはスマホの電灯等を使って明るい状態で確認してください。
燃料タンクの中にサビが出ていると、サビが落ちてガソリンと共にエンジンに流れてしまい、思わぬ悪さをすることがあります。
ひどいサビの場合には、タンクに穴が開いて、ガソリンが漏れることもあります。
ひどいサビの場合、サビを取ることで、逆にタンクに穴が開く事もありますので、要注意です。
そのため、ひどいサビの場合には、最初からタンクの交換を検討したほうが無難なのですが、そうなると部品代だけでも結構な出費になります。
チェック⑤ バイクのエンジンをかけてみよう
言うまでも無いことですが、エンジンが掛からないバイクはダメです。
店員が「バッテリーが切れています」とか「プラグ交換をすれば大丈夫です」等、何らかの理由を付けて、エンジンを動かそうとしない場合には、そのバイクは買ってはいけませんし、その店からも買ってはいけません。
エンジンをかけた時にアイドリングが安定していることやエンジンからガラガラ、カチカチ等の音がしていない事を確認してください。
エンジンが動いている状態でハンドルを持ってみて、手に伝わる振動が大きいバイクも要注意です。
これらの症状は何れもエンジンやその周辺部品の異常を示しています。どのような不具合でも修理は可能ですが、安くはありません。
エンジンを動かしたら、電気系統も確認します。ヘッドライトやウィンカー、ブレーキランプなどです。
どこかに異常がある場合には、電球の交換だけで済むのか、それとも断線しているのかの確認が必要です。
どちらにせよ買主が直すべき事項ではなく、売主が直したうえで販売するべき点ですから、その場で指摘してください。
中古バイク販売店の保証は必ずつけさせる
これらの点検項目に異常が無いなら、そのバイクは買っても良いでしょう。
ですが買う時には必ず保証をつけてもらって下さい。中古バイクは買った時は良くても、乗り始めると様々な不具合が出るからです。
通常の保証期間は「6,000キロ又は3か月」というように定められていますが、内容についても必ず確認してください。
基本的には保証期間内に起こった不具合は、販売店が無償で対応するとなっていなければなりません。
但しどのバイク店でも以下の事項は保証しません。
消耗品の交換
販売店までの持ち込み費用
つまり中古バイクを買う場合には、不具合が起きたら持ち込めるエリアにある販売店で買わないといけないという事です。
保証が付けられないバイクを買ったり、保証が付いていても自分で持ち込めない遠方のバイク店から買ったりする場合には、不具合を自分で治す覚悟が必要です。
個人からバイクを買うなら
個人からバイクを買う場合には、保証は付きません。保証が無いことが個人から買い取るときの最大のリスクです。
バイクは少なからずオーナーの乗り方に影響を受けます。オーナーが変わればバイクの反応も変わります。
そのため、前のオーナーの時には何の不具合が無いとしても、新しいオーナーになった途端に不具合が出る事もあります。
個人売買は安くバイクを変えますが、その反面全責任を自分で負う事を求められるのです。
中古バイクを買ったら、直ぐに乗りまくる
中古バイクを入手したら、出来るだけ頻繁に乗ってください。
中古バイクは、乗り始めることで様々な不具合が出ますから、販売店の保証期間のうちに全ての不具合を出し、修理を受けるようにしてください。
保証期間内に最低でも1,000km、出来れば2~3,000kmは乗りましょう。
言い方を変えれば、買って直ぐに頻繁に乗れないような時期に中古バイクを買ってはいけないという事です。
例えキチンとした販売店から買ったとしても、不具合は出ます。それが中古車と言うものです。
動かさないと出ない不具合もたくさんありますから、保証期間に膿を出し切るようにしてください。
中古バイクを選ぶ時の4つの視点
如何でしょうか。バイクと言うのは自動車以上に繊細で傷みが出やすいのです。
その理由は大きく3つあります。
- バイクはこける
- バイクは構造がむき出しである
- バイクのエンジンは傷みやすい
これまで挙げたチェックポイントは、全てこの3点を念頭に置いて挙げています。
あなたがバイクをチェックする時にも、この3点を意識してチェックを行ってください。そうすれば、ここに挙げたチェックポイント以外にも、隠れた不具合を見つけられるようになります。
更にもう一点、忘れてはいけないことが有ります。
- 中古バイクは乗り始めると不具合が出る
これを加えた4点を忘れずに中古車選びを行えば、失敗してしまう可能性はかなり減らせます。