原付一種と二種、何が違うのでしょうか?どちらを選んだらいいのでしょうか?
一般的には原付二種の方が良いと言われますが、そんなに単純ではありません。
用途によっては原付一種の方が良い場合もあるのです。
目次
原付一種と原付二種の違い
原付一種と二種、この2つはエンジンの排気量で分類されています。
排気量とは人間で言えば肺活量の事。
肺活量とは、人が一回に吸い込んで吐き出せる空気の量のことですが、エンジンの場合はガソリンと空気を混ぜた「混合気」を一回に吸い込んで吐き出せる量を排気量と言います。
この排気量が50ccに満たないものが原付一種、50cc以上、125cc未満のものが原付二種です。
では排気量が違うと何が違うのでしょうか?
最も変わるのはパワーです。一回に燃焼させることができる混合気が増えれば、燃焼時の威力が大きくなり、パワーも出ます。
原付一種の排気量50ccとは?
それでは実際にどの程度の量の混合気を燃焼させているかを見てみます。
原付一種、つまり排気量50cc未満の車種のほとんどが排気量49ccなのですが、実際には50ccと表記して売られています。
では排気量50ccはどれくらいでしょう。実はこの瓶の容量が50ccです。
この瓶も同じく50ccです。
いかがですか?
あまりに小さくて驚かれたのではないでしょうか。
この小瓶1本分のガソリン混合気を燃焼させて人を乗せたバイクを走らせるのですから、大したものです。
かなり過酷な労働をバイクに強いているのが分かると思います。
不足するパワーは回転数で稼ぐ
この僅かな容量から生み出されるパワーは、たかが知れています。
そのため50ccのバイクは不足するパワーをエンジンの回転数で補います。
ギア付きの自転車を思い出してみて下さい。ギヤを変えてペダルを軽くすれば少ない力でベダルをこげますが、早く走らせるにはペダルをこぐスピードを上げなければなりません。
バイクも同じです。
原付一種のエンジンは力が無いので、ペダルを一番軽くしてあげないとエンジンが止まってしまいます。その分はエンジンの回転数を上げて補っています。
つまり原付一種のエンジンは相当な高回転で動かされているのです。
エンジンの非力を軽量化で補う
さらにパワー不足を補うために車体を軽くする必要もあります。重い車体を非力なエンジンで動かすには無理があるからです。
車体を軽くするために金属部品を出来るだけ減らし、プラスチックの部品を使うようになります。
しかしエンジンはプラスチックには出来ません。
なぜならエンジンは絶えず中でガソリンを燃焼させているため、かなりの熱を持つからです。エンジンをプラスチックで作ったら溶けてしまうのです。
同じようにチェーン等の摩擦熱を発するものにもプラスチックは使えません。強度が不足する部分も金属で作る必要があります。
全ての負担がエンジンにかかっている
原付一種のエンジンであっても金属で作らざるを得ませんが、軽くはしなければならないので、全ての部品を出来るだけ小さく薄くして軽くする工夫がなされます。
その結果強度は落ちます。
このようにギリギリまで強度を落とされたエンジンを、ぎりぎりまで高速で回転させて走るのですから、エンジンへの負担はかなり大きくなります。
ただでさえひ弱な原付一種のエンジンに大きな負荷が掛けられるため、エンジンの寿命が短くなります。
ホンダのカブなどの異常にタフな車種を除けば、平均的寿命は1万5千キロ~2万キロ程度です。キチンとメンテナンスを行っても、3万キロくらいでしょう。
排気量125ccになるとどうなる?
では原付二種、排気量が125ccになると何が変わるのでしょうか?
先ず125ccの排気量はこれくらいです。
或いはこれくらい。
依然としてかなりの少量ですが、50ccに比べれば容量が2.5倍になるのですから、当然ながらパワーも2.5倍です。
ギアが少し重くなっても大丈夫ですから、エンジンの回転を少し落とせます。
パワーがあるので、車体やエンジンも少し重く丈夫に作れます。
そのため単に早く走れるだけではなく耐久性が増します。
寿命は平均して2万km~3万kmくらいですが、メインテナンスをきちんと行えばもっと伸ばす事も可能です。
原付一種と二種の維持費はほとんど変わらない
つぎに維持費の違いを見てみます。
気になる部分ですが、実はほとんど変わりません。
原付一種と二種の自賠責保険料は同額
先ず自賠責保険料ですが、原付は全て同じカテゴリーなので自賠責保険料は同じです。
参考までに2018年の自賠責保険料を載せておきます。表示価格は契約期間全てを通じた総額です。
車種/保険期間 | 12ヶ月 | 24ヶ月 | 36ヶ月 |
---|---|---|---|
バイク (250cc超) |
8,290円 | 11,520円 | 14,690円 |
バイク (125cc超~250cc以下) |
8,650円 | 12,220円 | 15,720円 |
原付一種・二種 | 7,500円 | 9,950円 | 12,340円 |
原付一種と二種の任意保険もほぼ同額
次に任意保険ですが、これもほぼ同額です。
どの保険会社も車種により若干の違いを設けてはいますが、微々たる違いでしかありません。
原付一種も二種も自動車保険の特約であるファミリーバイク特約の対象となっていますが、この特約を使う場合でも一種と二種の保険料は全く同じです。
尚、車両保険料は元のバイクの購入費によって変わるので、二種の方が高くなる事が多いでしょう。
ガソリン代は二種の方が安くなることも
ちょっと意外なのがガソリン代です。
実は二種の方が燃費が良く、ガソリン代が安くなることすらあるのです。
但しこれは走り方次第。急発進・急停車を繰り返していたら燃費は確実に悪くなりますし、それに加えてバイクの傷みも早くなります。
駐車場代は原付二種の方が高くなる
駐車場代は原付一種と二種で変わります。
原付一種は自転車に準じた扱いとなるため、自転車用の駐輪場の一部が原付一種の為に確保されていることが少なくありません。
一方で原付二種は自動車に準じた扱いとなるので、一種のように自転車駐輪場の一角に駐車スペース設けることが出来ず、専用の駐車場を使わざるを得なくなります。
自動車用駐車場には、消防設備の設置が義務化されているので、整備維持費が高くなります。その結果、駐車料金も高くなります。
用途別に原付一種と原付二種のどちらが良いかを考えてみる
このように原付一種と二種は性能は明らかに異なりますが、駐車場代などを除いた維持費はほとんど変わりません。
では実際に乗るとしたらどちらが良いのでしょうか? 用途別に合う合わないを考えてみます。
単純に考えればパワーがあって寿命が長いのに維持費は変わらない二種の方が良いとなりますが、ここに法律や環境が加わると少し話が変わってくるのです。
通勤・通学に使う場合には、原付一種? 原付二種?
通勤通学に用いることを前提に、一種と二種を比べてみます。
通勤・通学時間の短縮には2種がおススメ
通勤や通学で一番大切なのは「早く目的地に着けること」ではないでしょうか。
早く着くことが重要であるならば、原付一種に課せられた、最高時速30kmと二段階右折は致命的な欠点となります。 信号や交差点が多い地域では所要時間が自転車と変わらない可能性もあります。
原付一種と二種に課せられた法律の制限はこのように異なります。
法 定 最 高 速 度 |
最 大 積 載 量 |
二 段 階 右 折 |
バ ス 専 用 レ ー ン の 走 行 |
駐 輪 場 へ の 駐 車 ∧ 一 般 例 ∨ |
|
原 付 一 種 |
時 速 30km ま で |
30 ㎏ ま で |
義 務 |
可 | 可 |
原 付 二 種 |
時 速 60km ま で |
60 ㎏ ま で |
禁 止 |
不 可 |
不 可 |
参考までに、自転車と原付一種、二種の一般的な速度は以下の通りです。
ママチャリ | 12〜18Km程度 |
マウンテンバイク | 20〜25Km程度 |
ロードバイク | 20〜30Km程度 |
原付一種 | 時速30kmまで |
原付二種 | 時速60kmまで |
実は原付一種とロードバイクやマウンテンバイクの速度はあまり変わりません。
通勤・通学路に一方通行路や歩行者専用道路が多い場合には、原付一種より自転車の方が早く目的地に着く可能性が高くなります。
尚、原付一種で30kmを超えて走ると、交通違反の取り締まり対象になる可能性が大変高いことも覚えておきましょう。原付一種で走行する場合には、30kmをきちんと守った方が利口です。
通勤・通学の時間短縮を目的にするなら、原付2種をおススメします。
駐車場とバスレーンの有無は必ず確認して
目的地に早く着くには原付二種が有利ですが、駐車場の確保と、バス路線の走行には原付一種の方が有利な場合がありますので、事前に確認してください。
先に記しました通り、原付一種は駐輪場が使えます。駅・職場・学校などの目的地に停められる可能性は原付一種の方が高いでしょう。
また、通勤通学路にバス専用レーンが有る場合にも、原付一種に部が有ります。
バイクの中では自転車の扱いに準じる原付一種だけがバス専用レーンを走行できるのです。
但し原付一種は一番左の車線しか走ることが出来ませんので、バス連用レーンが左車線ではない場合には走行できませんし、バス停に停車したバスを抜かす際には危険な追い越しとなる可能性がありますので要注意です。
駐車場とバスレーンは事前に十分に検討してください。
結論
通勤・通学には原付二種がお勧め。 但し目的地の駐車場には注意。
距離が短いなら、自転車の方が早い場合もあり。
近所への用事に使うなら、原付一種? 原付二種?
使用目的が近所への買い物や、習い事などで走行距離が短い場合には最高速度の差は問題ではなくなります。
一方で、狭い路地での走行が楽であったり、行き先で停められる場所が多いことが重要となります。
駐輪場への 駐車 (一般例) |
最大 積載量 |
バス専用 レーンの 走行 |
|
原付 一種 |
可 | 30㎏まで | 可 |
原付 二種 |
不可 | 60㎏まで | 不可 |
スーパーマーケットなどでは、原付一種のみ自転車用駐輪場への駐車を認めているケースも多いので、駐輪場が使える原付一種は大変利便性が高くなります。
結論
近所への用事で使うなら原付一種がお勧め
趣味・旅行・ツーリングに使うなら、原付一種? 原付二種?
原付一種、二種どちらも高速道路は走れませんから遠出には向きません。
しかし一般道を走るにしても最高速度制限の差は大きいのです。
原付一種の場合にはその他の車両の流れに合わせて走ることが出来ないために、何度も抜かれる事になります。
実際に原付一種に乗っている方々は「抜きにかかっている車両が来ていないか、常にバックミラーを気にしながら走行していて疲れる」と口を揃えます。
当然長距離であるほど疲れます。
その点を考えただけでも、原付二種の方が圧倒的の良いのですが、更に二種には荷物を積める量が多かったり、二人乗りが出来るなどのメリットも加わります。
法定最高速度 | 二人乗り | 高速道路 | |
原付一種 | 時速30kmまで | 不可 | 不可 |
原付二種 | 時速60kmまで | 可 | 不可 |
結論
趣味に使うなら、原付二種。
原付一種では疲労感が増し、行動範囲が狭くなる。
結果は? あなたに合うのは原付一種? それとも二種?
如何でしたでしょうか。
原付一種と二種、似ているようではありますが、実際には全く違った特徴を持っています。
使い方により、その特徴を生かせるシーンも変わりますので、単に性能で判断するのではなく、自分の用途から選択するようにしましょう。