ガリバーとバイク王、どちらも中古自動車や中古バイクの買取企業として、一般に良く知られた会社です。
ガリバーとバイク王は何れも「中古買取専門会社」として事業を開始しています。
中古車買取専門会社とは、一般顧客からの買取を専門に行っている会社のことです。
もちろん、買うばかりでは仕事になりませんので、買ったものは売るのですが、中古買取専門会社の場合には一般顧客への販売は行いません。一般顧客ではなく、中古車販売店などの企業に売ります。
目次
バイク王とガリバーは中古オークションや海外輸出への供給源
車やバイクの買取専門会社が買い取った商品は次のような先に販売されます。
・海外へ転売する
この「買取専門」を最初に大々的に行ったのがガリバーインターナショナル(現㈱IDOM)です。
同社は1994年に買取専門事業を開始して大成功を収めました。
【ガリバー創業時のビジネスモデル】
出典 : IDOM Inc.
現在のガリバーは買取だけではなく、一般顧客への販売も行っていますが、創業当時は中古車事業なのに店頭に車が無いという、かなり異質な店構えで営業を行っていました。
バイク業界ではバイク王がガリバーから遅れること5年、1999年に同じビジネスモデルでの稼働を開始しています。
バイク王やガリバーは中古車業界の仕組みを変えた
ガリバーやバイク王が登場するまでの中古車流通業界は、買い取った店がその車を修理し、中古車として売るのが主流でした。
そのため「自社で売れない車両は買い取らない」のが当たり前だったのです。
しかし買い取り専門店はもともと自社で売ることを考えていません。買い取った車両は直ぐにオークションに出すか、海外に売ります。
自分の目の前にいる顧客ではなく、買ってくれそうな人が居る所へ商品を売るのです。そうすれば売れる可能性は格段に高くなります。
このようなビジネスモデルを採用することで、買い取れない車種が無くなりました。
これに加えて、中古車を直すという作業も不要となりました。修理は売った先の業者が行うからです。
従来の「直して売る」という方法に比べて、1台あたりに必要な手間も時間も大幅に減ったのです。
買取専門店の仕組みを更に進化させた「一括査定」
ガリバーやバイク王の新規展開で直接打撃を受けたのが、かねてからの中古販売店です。
ガリバーやバイク王は広告宣伝に力を入れました。どちらも目立つ店舗を持たないので、広告宣伝を行わないと、存在すら分かってもらえません。世間に知られるためには大量の広告を打つ必要があったのです。
また、それまでの中古販売で必要であった、広い敷地を維持するための固定費が不要となったことで、潤沢な広告費が捻出できたという側面もあります。
この広告戦略が、通常の中古販売店の顧客数に影響を与えないはずがありません。当然、既存店の顧客数は減ります。
この既存店の顧客減少が、一括査定を生む素地となっています。1回の手続きで複数社の見積もりが取れるという手軽さを謳って集客を行い、参加店から広告料を徴収するのが一括査定です。
一括査定の会社が車に触ることは有りません。
一括査定とは、広告事業なのです。
一括査定と買取専門、すでに境界は消失している
このように、一括査定と買取専門店は同じ中古車買取ですが、その仕組みがまるで違います。
一括査定は単なる広告代理店で、実際に買取を行うのは、集客を依頼している店です。
一方で買取専門店は、その店が直接買い取ります。
どちらが高い値で買い取れる余力があるでしょうか?
もうお気づきと思いますが、店舗維持費などが低い買取専門店の方が、資金余力があります。理論上では。
現実はそう簡単ではありません。
今や買取専門店は一括買取から顧客情報を購入していますし、自社での個人客向けの販売も開始しています。
いまやどの会社がどちらに属しているのか、ハッキリ区別できない状態になっているのです。
これからの中古車買取
このように中古車の買取は、ガリバーやバイク王の出現で大きくその形態を変えました。
その結果、どの会社も新しい仕組みに対応する努力と、今後の流れに乗り遅れないための戦略が求められるようになってきています。
昨今、自動車もバイクもリースが注目されています。かつてのように「借りた車に乗っているのは恥ずかしい」という概念は今や姿を消しました。
自己所有に価値を置かない消費者が増えていく中で、中古車ディーラーはどのように生き残っていくべきなのでしょうか?
恐らく「買い取る」「売る」という概念から離れた発想が求められるのでしょう。
かつてガリバーやバイク王のような大きな変化が、もうすぐそこまで迫ってきているはずです。